「っ……、最悪……」
「え? どうしました?」
「いや、なんでもないです。着いたら教えてください」
午前二時。タクシーの後部座席で、高梨一哉《たかなしかずや》は頭を抱えていた。
二十年来の親友である伊神久志《いがみひさし》に、友人として持つべきものではない感覚を覚えたからだ。
いつも通りに飲みに行って、いつも通りにたわいもない話をして、またなと言って帰るはずだった。
それなのに、ピタリと身体をくっつけてくる伊神に、妙な感覚を感じた。
「あいつ以外なら誰でも……」
伊神以外だったら、本当に誰でも良かった。
たとえ男が好きでも関係ないと思っていた。
それなのに……。
※前半は高梨一哉視点。後半は伊神久志視点。同じ物語を含めたお話を両方の視点で楽しむことが出来ます。
攻め視点と受け視点の両方をお楽しみください。
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- 東 紗鋳樹(著) いぬねここ(イラスト)
- 2020/09/19
- 549
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