水龍要塞、それは小さな島にある違法建築群の通称だ。
そこは本土の法律が届かない無法地帯であり、独自の自治を築いている。
ある暑い夏の日――。
うだつの上がらない探偵・トーノのもとに、一件の依頼が舞い込んだ。
「失踪した娘の奥歯が届けられた――娘の死体を探して欲しい」
ときを同じくして、水龍要塞を取りまとめ組織のうちのひとつ、ジウがリーダーを務める玄冥会の構成員がひとり姿を消し、その女のところに人間の奥歯が届けられた。
そして、リオの歯科診療所には、ここ最近おかしな患者が通ってきている。
身体改造愛好者であるタギー・ブッチャーは、診察のたびに「健康な歯」を抜いてくれと頼むのだ。
その日のタギーも、犬歯が痛むから抜いてくれとやってきて……。
歪んだ執着と支配欲。
叶わない思慕に隠された肉欲。
庇護欲からの独占欲。
この街はすべての欲を暴き出す。
それは、支配されることによって生まれる狂気の自由。
無法地帯で繰り広げられる、欲に満ちた獣たちの争い――。
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- 二一(著)伊藤モネ(イラスト)
- 2021/12/10
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