エリオットは、エリオットとして生きていた。しかしある人物の姿絵を見て名前を聞いた瞬間、熱を出して倒れてしまう。まさに前世を思い出した瞬間だ。
ここは、前世で最期に読んだ小説『王立学園物語~運命の君と恋をする~』の世界だと気付いたのだ。ならば自分はモブで間違いないだろう。
ボーイズラブでオメガバースの世界である『王立学園物語~運命の君と恋をする~』通称キミコイの小説。その中でのエリオットの立ち位置は、騎士団長の息子の婚約者。騎士団長の息子――マクシミリアン・エイデン侯爵令息は、キミコイの主人公である男爵令息の、取り巻きのひとりなのだ。いずれマクシミリアンから婚約破棄される結末を知っているからこそ、婚約の打診が来ている今、なかったことにしたい。
しかし先方のエイデン侯爵家は、この婚約に乗り気のようだ。それなのに婚約の相手であるマクシミリアンからは、あまり好かれているように思えない。やはり物語の強制力が働いているせいかと思っていたら、どうやらキミコイに出てくるマクシミリアンの姿と違うようだ。
何故キミコイに出てくるマクシミリアンの姿が、目の前にいる彼と違うのだろうと不思議に思う。気付けば出会った当初からマクシミリアンの様子は、キミコイとは違っているようだ。彼が変わっていたのは、自惚れではなくエリオットのためだとしたら。
婚約回避したいと思っていた自分はもういない。エリオットは、キミコイのマクシミリアンではなく、目の前のマクシミリアンを信じようと決意を新たにする。目指すは婚約破棄回避だ。
不憫度少なめ。シリアス系。異世界転生。オメガバース。
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- 藍白(著) ひいろ(イラスト)
- 2022/1/14
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