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聞こえず、話すことが出来ないから、家を出されるのだろうか。
口に出来ない思いに蓋をして、アシュリーは父である男爵の言いつけ通り、馬車に乗り込む。十六年過ごした生家を離れて、婚約をするために辺境の地へ赴くのだ。幼き頃から約束されていたホールデン伯爵令息との婚約を解消されて。

アシュリーは、オルコット男爵家の長男として生を受けた。双方の祖父が知人だったことから、ホールデン伯爵令息と婚約をすることになる。
しかしその祖父らも亡くなった今、アシュリーが伯爵令息と婚約する必要はなくなったようだ。数年前に父である男爵と再婚した、義母の連れ子である義弟のティモシーがいるのだから。
ティモシーは美しい。アシュリーと違って、聞こえて話すことが出来るからこそ、伯爵令息であるセドリックとの仲は縮まっていったのだろう。そしてアシュリーではなく、ティモシーとセドリックが婚約し、ふたりがオルコット男爵家を継ぐことになるはずだ。
そこにアシュリーは必要ない。だからこそ今日、辺境伯に嫁ぐために家を出て行くのだ。
もし聞こえて、話すことが出来たら、セドリックと婚約するのは自分のままだったのか。
いや、きっとそれだけではないのだろうと、アシュリーはガタゴトと進んでいく馬車の中で首を振った。

馬車での移動が八日を過ぎた日、突如馬車が止まった。どうしたのだろうと不思議に思ったとき、アシュリーが乗っていた馬車は強盗に襲われてしまう。このまま死ぬのだろうかと思ったとき、屈強な男――騎士たちが現れた。その中でも一際存在感がある男に目を奪われる。
そのときギルと名乗った男から、アシュリーは目が離せなかった。

聞こえず話せなくても、伝わる思いはある。そのことを事実として教えてくれたのは、愛しいつがいだった。辺境の地で静かに花開く物語。

オメガバース・障がい描写・不憫切ない・シリアス系。残酷描写あり。

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  • 藍白(著) もぐさもぐ(イラスト)
  • 2021/12/24
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